錦眼鏡余話2:No44
海洋エネルギー 

福島原発事故後、電力不足を補うために、太陽光や風力など
再生可能エネルギーの開発が注目を集めています。

A新聞の科学記事が毎週月曜日と木曜日に掲載されています。
先日の科学記事は「引き出せ海の発電」と題して、
海洋エネルギー発電が取り上げられていました。

大小100以上の島が点在する長崎県・五島列島は、
島と島との間:瀬戸の潮流が秒速3メートルを超える場所もあるそうです。
「この強い潮流のエネルギーを発電に使えないだろうか」
九州大流体環境理工学部門のI教授らは、
「潮流発電」の可能性を探っているそうです。

調査の結果、適地は奈留島と久賀島の間だそうです。
このエリアへ水車66基を設置した場合、
発電量は年間約7千万キロワット時になるそうです。
一般家庭約1万5千世帯分に相当する量です。
ただ、実際に設置するとなると、66基で71億円かかるそうです。


海洋エネルギーの開発は、ヨーロッパが進んでいるそうです。
スコットランドのオークニー諸島にある欧州海洋エネルギーセンター
(EMEC)に、世界中の企業が集まって実験に取り組んでいるそうです。
波力と潮流・海流発電は、すでに実証段階にあると言われています。

日本の海洋エネルギー利用は、第1次石油ショックのあとに始まり、
1998年まで世界のトップを走っていたそうです。
ところが、発電コストが1キロワット時当たり140円から下げられず、
研究が下火になってしまったそうです。
その後、ヨーロッパ勢が研究に乗り出し、
日本はイギリスやポルトガル、ノールウェーなどに
大きく水をあけられてしまったそうです。

新聞記事に戻ります。

海洋エネルギーを利用した発電方法には、
主に4つの方法があることがわかりました。

1.波力発電
  波の上下運動を利用して発電する

2.海流発電
  黒潮や親潮など、常に流れている海流で発電する
  風力発電の海中版である

3.潮流発電
  海峡を流れる潮流を利用して、プロペラを回して発電する

4.海洋温度差発電
  海面に近い温かい海水と冷たい深層水の温度差を利用して、
  アンモニアを液体から気体にしてタービンを回す

更に新聞を読み進めていくと、
「波・潮・海流 潜む力は原発50基分」との試算も出ていました。
これはかなり大胆な記事ですが、読み進めていくと
随分と無理な試算をしていることが分かりました。

つくった電気を送電する課題が解決されていないことです。
沖合を流れる潮流で発電しても、陸地まで送電しなければなりません。
海底何十キロも送電用の海底ケーブルを敷設するには、
費用の面からもハードルは高いと言えます。

また、波力発電の潜在能力は高いと言われていますが、
それは海面に薄く広く分布しているエネルギーであって、
それを全部効率よく集めることが出来た場合の数字だそうです。

福島原発事故後、原発にかわる再生エネルギー活用が注目を集めています。
太陽光発電や風力発電は、世界各国でかなり進められていますが、
海洋エネルギー開発はまだまだこれからです。
しかし、その潜在能力は大変な魅力です。

周りを海で囲まれた日本が、
再び海洋エネルギー開発において世界をリードしていってほしいと願っています。

それにしても、日本では国の将来を決めると言われる将来の「エネルギー政策」が
政府の手で決められず、個々の原子力発電の稼働のみが問われている現実
を思うと、改めて政治の貧困を嘆きたくなります。

(2012.6.19)