錦眼鏡余話2:No43
ドイツから学ぶ(新聞から:その2)

5月27日の朝刊の社説に「ドイツの脱原発」と題して
「素早い行動が生む果実」という記事が載っていました。

この記事を読むと、日本の政治の貧困を強く感じます。
また、決められない日本の政治にむなしさを感じます。

東日本大震災は、世界各国にも強い衝撃と影響を与えました。

ドイツは、早々に国をあげて脱原発の道へと回帰しました。
脱原発を決めて、間もなく1年になろうとしています。

ドイツでは、すべての原発を10年後の2022年までに閉鎖することにしました。
ドイツ政府の明確な目標と計画のもと、
それに向けて社会や産業界が一斉に動き始めているそうです。

早くも、社会や産業界が素早い行動で実績や成果をあげ始めているそうです。

ドイツの変化を象徴しているのは産業界の動きです。
電力大手のエーオンとRWE(アール・ヴェー・エー会社:エネルギー会社名)は、
英国の原発建設計画からの撤退を決めました。
すでに合弁会社を設立していましたが、今後の建設費増や原発事業のリスクを
重視した判断だそうです。
電機大手のシーメンス社も、原子力事業から完全撤退をしました。
替わりに、蓄電の研究開発、洋上風力発電所への投資を進め、
「グリーン企業」へ変身を図りつつあります。

ドイツで注目したいのは、風力や太陽光、バイオマスなどの自然エネルギー普及に
よる経済効果です。
ドイツ政府の推計によると、
ものづくりから流通サービス業まで約38万人もの雇用が生まれたそうです。
ビルや住宅の断熱性を向上させ、エネルギー効率の高い街づくりや
節電や省エネが生活に無理なく溶け込み、経済も活性化する好循環を生んでいるそうです。

ただ、予想以上の変化の早さは、混乱も生んでいるそうです。
その一つが太陽光発電の買い取り価格引き下げです。

自然エネルギーによる発電を固定価格で電力会社に買い取らせる仕組みは、
太陽光発電などの自然エネルギー発電の普及を支えてきました。
しかし、投資が過熱し、電気料金を通じて消費者の負担増を招いたため、
買い取り価格を2割以上引き下げることになったそうです。

今年7月から買い取り制度を本格スタートする日本にとって、
ドイツの先行事例から学ぶことは多いはずです。

6月16日、関西電力大飯原発の再稼働が政府によって最終決定されます。
この夏の電力不足をにらんでの再稼働です。

ここで、ドイツと日本と徹底的に違うことは、
政府が将来へのエネルギー政策を国民へ示すことができたかです。

ドイツ政府は、明確な目標と計画を打ち出し、
それに向けて社会(国民)も企業も一斉に動き出しているのです。

片や日本は。。。。
この夏の電力不足対策のために、大飯原発を再開をどうするかと
いう一点で議論が進んでいます。
日本の将来へのエネルギー政策の中で、原発をどうするのか。。。
脱原発でいくのか今後も原発に頼っていくのか、根幹のところを置き去りにして、
議論が電力不足や原発に伴う雇用の問題と言った目先のことだけに
終始している感じがします。

地殻の活動期に入ったとされる日本、大きな災害がいつ起こっても不思議でない日本。。。
地震が多発する日本列島に散らばる54基の原発を廃炉にするだけでも
長い年月と巨額の費用がかかります。

将来、日本は全国に散らばる54基の原発をどうするのか。。。
日本のエネルギー政策にはビジョンも展望もありません。
将来の日本のエネルギー政策の中で原発問題を避けては通れません。

脱原発を打ち出せば、それに伴い、様々な問題が派生してきます。
原発によって、その地域の多くの住民の暮らしは成り立っています。
住民の生活や雇用はどうするのか。。。

原発をどうするかは、
日本の将来のエネルギー政策の中で決めなくてならない問題です。
そこで、脱原発を決め自然エネルギー普及を進めているドイツ。。。
そこから、多くのものを学びとらなければ、日本の将来は危ういと考えます。

(2012.6.17)