草 笛
 




 5月になると田んぼのあぜにはスズメノテッポウがびっしりと生える。これの穂先を抜けば簡単に草笛ができる。かぼそいピーという音に郷愁を感じる人も。伝統的な草花遊びである草笛を紹介しよう。

<スズメノテッポウの笛>
 スズメノテッポウの茶色になった穂を抜き取るとあとに透明の部分が残る。ここをいためないように、葉を折り返し、抜き口をくわえて吹く。しばらく吹いているとならなくなるので、とりかえてやってみよう。
<葉を折った笛>
 葉を折っただけの簡単な笛。幅4〜5cm、長さ7〜10cmほどの葉が最適。おもてを内側に折って折り目の中央に7mmくらいの穴をあけ、V字型に折り返して、中指と人差し指にはさんで吹く。指の閉じ具合を調節して、葉の間に少し隙間ができるようにするのがコツ。
  
<笹笛>
 ササの葉を半分くらいの幅に裂いてから、図のように、両手の親指の間にはさみ、強く息を吹き込んでならす。葉をたるませないように張るのがコツ。するどい大きな音がする。ササに限らず、イネ科の草など葉脈が縦に走っている葉なら同じ方法でならすことができる。
<カラスノエンドウの笛>
 カラスノエンドウは、春の田んぼのあぜや土手によく
生えている、紅色の花の草。5月頃になると小型のエ
ンドウのような豆ができる。このさやで笛を作る。
 実のよく入ったさやをとり、さやの腹に爪を入れて図
Aのように開いて豆を取り出し、もう一度さやを閉じて
先の側からから吹く。大きな音がする。

<木の葉の重ね笛>
 常緑広葉樹の葉を大小2枚を図のように重ね、指先で2カ所に穴をあける。2つの穴を口にくわえて吹くと、ブーブーと低い音が出る。

<木の葉の巻き笛>
 やや厚みのある常緑広葉樹の葉をとり、先端から巻いていく(直径5〜7mmくらい)。一方を指でつぶし口にくわえてふく。息の通りが悪いように感じるが、低い大きな音が出る。ツバキ、マサキ、カシ、モチなどの庭木でもできる。常緑樹とはいえ、やはり葉の柔らかい春がおすすめ。


<タンポポ笛>
 タンポポは春から初夏にかけて道ばたや土手などあらゆる所に生えているが、やはり、やわらかい春のものが笛には適している。図のように茎を3〜4cm切り取り、一方の切り口を噛みつぶして、つぶした方をくわえて吹く。
<イタドリ笛>
 とうの立ったイタドリの茎を、鋭利なナイフで、図@のように一方は斜めに一方は直角に切る。ササなどを用いて図Aのようなリードを作る。斜めに切った方には図Bのように茎肉の部分に切り目を入れ、リードを半分まで差し込む。リードの出た部分を斜めになった切り口に沿って折り曲げて吹く。
<麦笛>
 今ではなかなか見られなくなったが、かっては冬作に麦を作る農家が多かった。5月の末くらいになると麦の穂が出るが、中に黒穂菌に冒されたものがまじっていることがある。昔の子どもはこの黒穂を、胞子が散らないようにそっと抜いて麦笛を作った。まず、図@のように抜き取った茎の節の上で切り、穂は捨てる。これに、図Aのように、茎の直下に長さ1.5〜2cmの割れ目を入れて吹く。割れ目の長さがうまくないと鳴らないので、はじめは割れ目を小さめにしておいて試しながら大きくしていくと良い。図Bのように、別の麦わらを突っ込んで裂き、ここを口に含んで吹いてもよい。うまくいくと、とてもきれいな音色の笛だ。茎の長さにより音が違うので、何人かで作って和音を楽しんでも良い。







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